書評:私の財産告白(本多 静六)

書評:私の財産告白(本多 静六)

Kindleで読んだ。

前半の「私の財産告白」と後半の「私の体験社会学」から成る。

財産をどのように形成すべきか実体験をもとに記載されている。

 

本多式「四分の一天引き貯金法」により貯金する。

雪達磨の芯のように貯金がある程度の額に達したら

他の有利な事業に投資する。

明治20年代は幹線鉄道、安い土地、山林の投資が良いだろうと

ドイツ留学先の先生の教えの通りに実施した。

株式投資は「二割利食い、十割益半分手放し」による利益確保を基本とした。

投資方針は「好景気、楽観時代は思い切った倹約貯蓄、不景気、悲観時代は思い切った投資」である。

 

以上、至極シンプルである。

そして現代であっても、誰であっても実行が可能である。

ただし実はもっと重要なことが記載されている。

 

1、財産を作ることの根幹は勤倹貯蓄であると。

つまり、働くこと。働いたお給料がいくらであろうが、その1/4を貯金していくこと。最初に断行し継続する。つまり楽してお金が降ってくるわけではない。

2、アルバイトも行なった。

著者は大学教授であるが、並行して著述活動を心がけた。1日1ページを必ず記載した。また学問の切り売りとあるが、嘱託講師など呼ばれれば参加し活動した。収入の複線化を結果として行なった。

3、金の使い方、財産の処分方法が重要。

子孫の幸福は健康と教育が大切で財産は不要。よって匿名、他人名義による寄付が財産処分の最も良い方法である。

 

そして人生観「人生即努力、努力即幸福」は、人の普遍のテーマ「幸福は何か」という問いに「努力」であると答えている。お金ではないと。

この本は1950年11月に出版された。

著者が戦争を経験した上で「国家の敗戦とそれに伴うインフレがなければ貯金の力は偉大」と記載し、財産形成のリアル感が参考になる。そして出版より長い時間が経過した現在から見ても、その内容が普遍であることを強く感じた。結局何度か読み返すだろう書籍の一つ。