書評:定年前後の「やってはいけない」(郡山史郎)

書評:定年前後の「やってはいけない」(郡山史郎)

題名からして、定年前後の方(だけに向けた)のキャリア論と想定していた。読んでみたら人生をいかに幸せに暮らすかといった視点で書かれている。筆者は82歳。そして現役のビジネスマン、人生の先輩である。

会社員は区切りとして定年があるが、定年=隠居ではない。働かないという選択肢はない。自分の人生は自分で決定する。つまり、〇〇したかったのに〇〇だから出来なかったと言わない。そして、子供に、社会に迷惑をかけない。

前提が一生涯働くとなると、45歳までが人生の第1ハーフ。その後の第2ハーフ途中に定年というイベントがあるので、注意してね!というポイントがアドバイスとして記載されている。

特に私にとって参考となる記載は以下のとおり。

役職定年を迎えた時には「部長のポストを失った」などと嘆くのではなく、むしろ「よかった。これで第2ハーフを充実させるための準備の取り掛かることができる」と喜ぶのが正しい。

定年後の仕事探しは「お金」から入るのではなく、どのような条件を提示されても「とにかく働く」という気持ちでまず受け入れることが肝要だ。

転職は2回まで。転職を何度も繰り返す人は、やはり採用の時に嫌がられる傾向がある。

働くということの最も主要な目的は、お金であるのも事実だが、それ以外の目的もある。人間は他人や社会の役に立つことで幸せを感じる生き物であり、定年以降働くことを通して、誰かの役に立つことはやりがいや幸福感を感じることとなる、と筆者は説く。

私自身の夢は隠居である。しかしながら、この本は幸せとは何かという問に対し現実的で慎ましい形の回答をしている。労働できるならしたほうがいい、実は定年後に働けることは幸せにつながると。そう、労働讃歌である。